ポトスライムの舟

ポトスライムの舟
著者 津村記久子
イラスト のりたけ
発行日 単行本:2009年2月4日
文庫版:2011年4月15日
発行元 講談社
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 単行本:四六判上製本
文庫版:文庫判
ページ数 単行本:192
文庫版:208
公式サイト 単行本:ポトスライムの舟 単行本 講談社
文庫版:ポトスライムの舟 文庫版 講談社
コード 単行本:ISBN 978-4-06-215287-7
文庫版:ISBN 978-4-06-276929-7
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ポトスライムの舟』(ポトスライムのふね)は、日本の小説家津村記久子による小説である。

本項では、単行本『ポトスライムの舟』に収録されている表題作「ポトスライムの舟」に加え、「十二月の窓辺」についても記述する。

概要

中編「ポトスライムの舟」は、『群像2008年11月号に掲載されたもので、2009年に第140回芥川龍之介賞を受賞している[1]。同年2月4日に単行本『ポトスライムの舟』が刊行された[2]。単行本は、『群像』2007年1月号に掲載された小説「十二月の窓辺」を併録している。単行本の装幀は、名久井直子による。単行本の装画は、のりたけによる[3]。文庫版は、2011年4月15日に講談社文庫より刊行された[4]。中編「ポトスライムの舟」から5年後の物語が『ポースケ』に描かれている[5]

あらすじ

ポトスライムの舟
29歳のナガセは、契約社員として工場に勤務する傍ら、友人のヨシカが経営するカフェでアルバイトをしたり、データ入力の内職をしたり、パソコン教室の講師をしたりして働いている。ナガセは、就職氷河期に新卒で入社した会社で上司から凄まじいモラルハラスメントを受けて、退社したという過去をもつ。
ナガセはある日、NPO法人が主催する世界一周クルージングのポスターを見て、その費用の163万円が自分の工場勤務の年収とほぼ同額であることに気づく。しばらくの後、ナガセは世界一周クルージングの費用を貯めるために、節約に励む。
十二月の窓辺
ツガワは、郊外に本社がある300人程度の社員数をもつ印刷会社の支所で働いているが、職場の先輩のほとんどが年下であり、自分が会社に馴染めていないことを痛感し、自己嫌悪に陥っていた。ツガワはVという女性上司から辛辣なパワーハラスメントを受け、追い詰められていく。

主な登場人物

ポトスライムの舟
ナガセ 
長瀬由紀子。29歳。契約社員。奈良県に住んでいる。ポトスライムという観葉植物を育てている。
ヨシカ 
ナガセの大学の同級生。
岡田 
ラインリーダー。
十二月の窓辺
ツガワ
印刷会社の女性社員。
ナガト
薬品会社の社員。

書評

ポトスライムの舟
選考委員の高樹のぶ子は、「大きな夢を見ることができず、小さな夢をつないでいくしかないという現実をよくあらわしている。怒らず、いじけず、あきらめず、したたかに必死に日々を生きる姿が印象的に描かれていた」と評価している[1]ライター石井千湖は、「難しい言葉は使われていないので、すっと読めますが、書かれていることは深い」[6]「地に足の着いた金銭感覚を持つ主人公が、工場で稼ぐことができる年収を世界一周旅行に交換するという計画によって、閉塞感からぬけだすところがいい」[7]と評価している。東洋経済オンラインには、「重苦しいはずの社会の底辺近くでのささやかな楽しみや悩み、時に不条理に、しかし結局は日常を受け入れていく心理描写はさわやかで、友達のためになけなしの貯金をなんとなく使ってしまうあたりは秀逸だ」とする評価が掲載されている[8]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b “「賞に恥じない活動せねば」津村さん 芥川・直木賞贈呈式”. 朝日新聞社 (2009年2月25日). 2018年11月13日閲覧。
  2. ^ “ポトスライムの舟 単行本”. 講談社. 2018年11月13日閲覧。
  3. ^ 『ポトスライムの舟』 2009.
  4. ^ “ポトスライムの舟 文庫版”. 講談社. 2018年11月13日閲覧。
  5. ^ “注目の新刊 『ポースケ』 ダ・ヴィンチ2014年2月号”. KADOKAWA (2014年1月15日). 2019年3月21日閲覧。
  6. ^ 石井千湖 (2009年1月16日). “第140回芥川賞受賞『ポトスライムの舟』”. All About. 2018年11月13日閲覧。
  7. ^ 石井千湖 (2018年9月20日). “無意味な作業をただ強いる 不思議な“工場”の物語”. ブックバン. 2018年11月13日閲覧。
  8. ^ “ポトスライムの舟 津村記久子著”. 東洋経済オンライン (2009年3月28日). 2018年11月13日閲覧。

参考文献

 第140回芥川龍之介賞
 
1930年代 - 1950年代(第1回 - 第42回)
1930年代
1940年代
1950年代
 
1960年代 - 1970年代(第43回 - 第82回)
1960年代
1970年代
 
1980年代 - 1990年代(第83回 - 第122回)
1980年代
  • 第83回 該当作品なし
  • 第84回 尾辻克彦「父が消えた」
  • 第85回 吉行理恵「小さな貴婦人」
  • 第86回 該当作品なし
  • 第87回 該当作品なし
  • 第88回 加藤幸子 「夢の壁」/唐十郎「佐川君からの手紙」
  • 第89回 該当作品なし
  • 第90回 笠原淳「杢二の世界」、高樹のぶ子「光抱く友よ」
  • 第91回 該当作品なし
  • 第92回 木崎さと子「青桐」
  • 第93回 該当作品なし
  • 第94回 米谷ふみ子「過越しの祭」
  • 第95回 該当作品なし
  • 第96回 該当作品なし
  • 第97回 村田喜代子「鍋の中」
  • 第98回 池澤夏樹「スティル・ライフ」/三浦清宏「長男の出家」
  • 第99回 新井満 「尋ね人の時間」
  • 第100回 南木佳士「ダイヤモンドダスト」/李良枝「由煕」
  • 第101回 該当作品なし
  • 第102回 大岡玲「表層生活」/瀧澤美恵子「ネコババのいる町で」
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