概素数

2-概素数である6のCuisenaire rodを用いた実演

数論において与えられた自然数概素数(がいそすう、: almost prime)であるとは、適当な自然数 K を選べばその自然数の素因数の(重複度を含めた)個数が高々 K 個となることを言う[1][2][注 1][注 2]

K は任意の値をとれるが、K の値に応じて概素数の概念が決まることに留意すべきである。どんなに大きな自然数 K に対してもそれに対応する概素数の概念を考えることができるから、明らかにすべての自然数が(何らかの K に対する)概素数であり、K と無関係に扱うことは無意味である。

定義

pi1 または素数であって必ずしも異なる必要はないものとし、K は自然数の定数として、自然数 n

n = p 1 p 2 p K {\displaystyle n=p_{1}\cdot p_{2}\dotsb p_{K}}
と書けるとき、n は概素数であると言う。K を具体的に一つ決めたとき、素因数の数が重複度を込めて高々 K であるような概素数全体の成すクラスを PK とすることがある[4][注 3][注 4]

小さい k に対する k-概素数
k k-概素数 OEISの数列
1 2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, … A000040
2 4, 6, 9, 10, 14, 15, 21, 22, … A001358
3 8, 12, 18, 20, 27, 28, 30, … A014612
4 16, 24, 36, 40, 54, 56, 60, … A014613
5 32, 48, 72, 80, 108, 112, … A014614
6 64, 96, 144, 160, 216, 224, … A046306
7 128, 192, 288, 320, 432, 448, … A046308
8 256, 384, 576, 640, 864, 896, … A046310
9 512, 768, 1152, 1280, 1728, … A046312
10 1024, 1536, 2304, 2560, … A046314
11 2048, 3072, 4608, 5120, … A069272
12 4096, 6144, 9216, 10240, … A069273
13 8192, 12288, 18432, 20480, … A069274
14 16384, 24576, 36864, 40960, … A069275
15 32768, 49152, 73728, 81920, … A069276
16 65536, 98304, 147456, … A069277
17 131072, 196608, 294912, … A069278
18 262144, 393216, 589824, … A069279
19 524288, 786432, 1179648, … A069280
20 1048576, 1572864, 2359296, … A069281

上で「高々 K 個」としていた部分を「ちょうど k 個」と置き換えることもできる。すなわち

自然数 n が素数 pi(必ずしも異なる必要はない)と自然数の定数 k を用いて
n = p 1 p k {\displaystyle n=p_{1}\dotsb p_{k}}
の形に書けるならば、n は概素数であるという[5]

そして具体的に k を一つ決めるごとに k-概素数の概念が定まる(上では「概素数」という名称を k の値を特定しない k-概素数の総称的な意味で用いているとも理解できる)。自然数 nk-概素数となるための必要十分条件は、その素因数が重複度を込めてちょうど k 個となることである。k-概素数全体の成すクラスを Pk と書く。[注 5][注 4]

性質

  • Ω(n)n の素因数分解に現れる(必ずしも相異ならない)素数の総数を与える数論的函数
    Ω ( n ) := a i ( n = p i a i ) {\displaystyle \Omega (n):=\sum a_{i}\qquad (n=\prod p_{i}^{a_{i}})}
    とすれば、より具体的に「nk-概素数であるための必要十分条件は Ω(n) = k となることである」と述べることができる。
  • 自然数が素数となる必要十分条件はそれが 1-概素数となることであり、同様に半素数となるための必要十分条件はそれが 2-概素数となることである。
  • 最小の k-概素数は 2k である。

n 以下の自然数 m でその素因子(相異なる必要はない)の数が高々 K 個(最初の定義の意味で mPK)であるようなものの数 πK(n)

π K ( n ) ( n log n ) ( log log n ) K 1 ( K 1 ) ! {\displaystyle \pi _{K}(n)\sim \left({\frac {n}{\log n}}\right){\frac {(\log \log n)^{K-1}}{(K-1)!}}}
と漸近する[6](これはランダウの結果である)。ハーディ・ラマヌジャンの定理(英語版)も参照せよ。

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 「概素数」を素因数がちょうど二つであるような自然数、本項で言う 2-概素数、すなわち半素数の意味で用いている場合がある[3]
  2. ^ ここで K は現れる箇所において必ず決まった「定数」でなければならないが、現れる箇所ごとに異なっていてもよい。
  3. ^ この分類において、クラス PK は包含的(K に対して単調増大)である。
  4. ^ a b 二つの流儀の PKPk という明らかに異なるクラスの間で記号の衝突が起きている(Kk も任意の自然数)が、どちらの意味であるかは文脈を頼るべきである。いずれにせよ N = K = 1 P K = k = 1 P k {\textstyle \mathbb {N} =\bigcup _{K=1}^{\infty }P_{K}=\bigcup _{k=1}^{\infty }P_{k}} である。
  5. ^ このように分類する場合、クラス Pk は排他的(ij ならば PiPj = ∅)である。

出典

  1. ^ Sándor, József; Dragoslav, Mitrinović S.; Crstici, Borislav (2006). Handbook of Number Theory I. Springer. p. 316. ISBN 978-1-4020-4215-7. https://link.springer.com/referencework/10.1007%2F1-4020-3658-2 
  2. ^ Rényi, Alfréd A. (1948). “On the representation of an even number as the sum of a single prime and single almost-prime number” (ロシア語). Izvestiya Rossiiskoi Akademii Nauk. Seriya Matematicheskaya 12 (1): 57–78. http://www.mathnet.ru/php/archive.phtml?wshow=paper&jrnid=im&paperid=3018&option_lang=eng. 
  3. ^ 例えば『概素数』 - コトバンクを参照
  4. ^ Heath-Brown, D. R. (May 1978). “Almost-primes in arithmetic progressions and short intervals”. Mathematical Proceedings of the Cambridge Philosophical Society 83 (3): 357–375. doi:10.1017/S0305004100054657. http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=2079092&fileId=S0305004100054657. 
  5. ^ Michiel Hazewinkel, ed. (2012), Encyclopaedia of Mathematics, 1, Springer Science & Business Media, ISBN 9789401512398, https://books.google.com/books?id=IEnqCAAAQBAJ&pg=PA158&dq=%22almost+prime%22 
  6. ^ Tenenbaum, Gerald (1995). Introduction to Analytic and Probabilistic Number Theory. Cambridge University Press. ISBN 0-521-41261-7 

外部リンク

  • Weisstein, Eric W. "Almost prime". mathworld.wolfram.com (英語).
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