R4200

R4200MIPS III命令セットアーキテクチャ (ISA) を実装したマイクロプロセッサミップス・テクノロジーズ (MTI) が設計し、NECがライセンス提供を受けてVR4200として製造・販売した。開発中のコード名はVRX。1993年に80MHz版VR4200を発表。1994年には100MHz版も登場した。低消費電力のWindows NTマシン向け(ノート型など)をターゲットとして開発された。MTIは整数演算性能でi486のハイエンドを凌駕しており、初期のPentiumの80%の性能だとしていた。実際にはパーソナルコンピュータには使われず(NECのEWS4800のノート型で使われたのみ)、組み込みシステムをターゲットに設定し直した。このため、R4600と競合することになった。

概要

R4200は、5段の古典的な命令パイプラインを採用している。特筆すべき特徴として、浮動小数点数の演算において仮数部の計算を整数用の演算機構で行っている点が挙げられる。指数部は別の演算機構で処理される。こうすることでトランジスタ数を減らし、コスト、チップサイズ、消費電力を削減している。しかしそのせいで浮動小数点演算性能が低くなっているが、R4200が想定する用途では高い浮動小数点演算性能を求められなかった。

R4200は、16KBの命令キャッシュと8KBのデータキャッシュを内蔵している。どちらもダイレクトマップ方式である。命令キャッシュのラインサイズは32バイトで、データキャッシュのラインサイズは16バイトとなっている。データキャッシュはライトバック方式を採用。

TLBはデータ用と命令用に分かれていて、データ用は32エントリ、命令用は4エントリとなっている。物理アドレスは33ビット幅をサポート。システムバスは64ビット幅で、プロセッサの内部周波数の半分の周波数で駆動される。

130万個のトランジスタを 81 mm2 のチップに集積している。NECは0.6μmのCMOSプロセスで製造した。パッケージとしては179ピンのCPGAがあり、R4000/R4400R4600とピン互換になっている。他に208ピンのPQFPもある。電源電圧は3.3V、80MHzでの消費電力は平均で1.8W、最大で2Wである。

R4300i

R4200の派生でMTIが組み込み用途に設計したR4300iは、1995年4月17日に発表された[1]。NECと東芝にライセンス提供され、それぞれVR4300とTX4300として販売された。100MHz版と133MHz版がある。NECの製造したVR4300は若干修正を加えてゲーム機のNINTENDO64で採用された。このためMTIとNECは多大な収益を得て、1997年のRISCチップ市場(32/64ビット)でMIPSアーキテクチャが首位に躍り出た。

R4300iではR4200に比べて整数乗算器が改良されており、システムバスはコスト削減のため32ビット幅になっている。チップサイズは 45 mm2 で、0.35μmプロセスで製造された。パッケージは120ピンPQFP。電源電圧は3.3Vで、消費電力は100MHzで1.8W、133MHzで2.2Wである。

NECはVR4300の派生品として、VR4305とVR4310を1998年1月20日に発表した[2]。VR4310は100MHz、133MHz、167MHzで動作し、0.25μmプロセスで製造され、120ピンPQFPでパッケージされた。

脚注・出典

参考文献

  • "MIPS, NEC will launch 64-bit device". (17 April 1995). Electronic News.
  • "NEC Unveils New MIPS Chip for Nintendo". (8 May 1995). Microprocessor Report.
  • Gwennap, Linley (31 May 1993). "MIPS Reaches New Lows With R4200 Design". Microprocessor Report, pp. 6–9.
  • Halfhill, Tom R. (July 1993). "Low-Power RISC from Mips". Byte.
  • Levy, Marcus (15 September 1994). "EDN's 21st Annual Microprocessor Directory". EDN.
  • MIPS Technologies, Inc. (17 April 1995). "MIPS/NEC Announce New Consumer-market RISC Processor". Press release.
  • NEC Corporation (20 January 1998). "NEC Offers Two High Cost Performance 64-bit RISC Microprocessors". Press release.
  • Ryan, Bob; Thompson, Tom (January 1994). "RISC Grows Up". Byte.
  • Yeung, N.K. et al. (1994). "The design of a 55SPECint92 RISC processor under 2W". ISSCC Digest of Technical Papers. pp. 206–207.
  • Zivkov, B.; Ferguson, B.; Gupta, M. (1994). Compcon Spring '94, Digest of Papers. pp. 18–25.
MIPSマイクロプロセッサ
全般
プロセッサー
MIPS64
適合
    • デスクトップ/産業機器
      • LS3A1000/LS3A1000-I(LS3A1000-i)
      • LS3A2000/LS3A1500-I
      • LS3A3000/LS3A3000-I(LS3A3000-i)
      • LS3A4000/LS3A4000-I(LS3A4000-i)
    • サーバ
      • LS3B1000
      • LS3B1500
      • LS3B2000
      • LS3B3000
      • LS3B4000
応用
プロセッサー
MIPS32
適合
  • Ingenic XBurst
    • JZ4720
      • Ben NanoNote
    • JZ4730 (Skytone Alpha-400)
    • JZ4740 (Dingoo A320)
    • JZ4750 (Game Gadget)
    • JZ4760
      • Velocity Micro T103 Cruz
      • Velocity Micro T301 Cruz
    • JZ4770
      • Ainol Novo7 Paladin
      • NEOGEO-X
      • GCW-Zero
    • JZ4780
MIPS64
適合
マイクロコントローラ
(組み込み機器)
M4K
  • Microchip Technology PIC32MX
4Kc/4KEc
  • ATI/AMD/Broadcom Xilleon
MIPS32
適合
ネットワーキング
4Kc/4KEc
5Kc
24Kc/24KEc
  • Qualcomm Atheros
    • AR7240
    • AR7161
    • AR9132
    • AR9331
  • MediaTek
    • RT3050
    • RT3052
    • RT3350
    • RT5350
    • RT6856
    • MT7620
  • Lantiq
    • DANUBE
    • VINAX
34Kc
  • Lantiq
    • AR188
    • VRX288
    • GRX388
  • Ikanos
    • Fusiv Vx175/173
    • Fusiv Vx180
    • Fusiv Vx185/183
74Kc
  • Qualcomm Atheros
    • AR9344
    • QCA9558
  • MediaTek
    • RT3662
    • RT3883
  • Broadcom
    • BCM4706
1004Kc
1074Kc
MIPS32
適合
  • Broadcom
    • various
  • Cavium(英語版)
    • various
  • Alchemy Semiconductor
    • Alchemy(英語版)
  • RMI Corporation
    • XLR
MIPS64
適合
  • Broadcom
    • various
  • Cavium(英語版)
    • Octeon
ゲーミング
various
スーパーコンピュータ
航空宇宙
MIPS64
適合
MIPS32
適合
クラシック
プロセッサー
MIPS I
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