鯉こく

長野県佐久市で供された鯉こく。

鯉こく鯉濃こいこく)とは、輪切りにしたを、味噌汁で煮た味噌煮込み料理。鯉こくのこくとは、濃漿(こくしょう)という、味噌を用いた汁物のことであり、鯉こくはこの濃漿の一種。江戸時代には、「鯉汁」、「胃入り汁」、「わた煎鯉」[1]とも呼ばれていた。

解説

濃漿は江戸時代までは盛んに作られており、鯉ばかりでなくウナギフナスッポンサンショウウオ、各種野鳥などでも作られていたとされ、臭みの強い魚肉類を濃く仕立てた薄味噌で煮込んだ料理だった。江戸時代以降は濃漿はほぼ廃れてしまい、鯉を材料とした鯉こくのみが生き永らえて現在に至っている。

庶民の肉食習慣が一般化する以前の重要なタンパク質、栄養元として利用され、海産魚類の入手が困難であった地域に多く存在し、2000年代以降も日本の各地に食習慣として伝承している[2][1]。鯉こくは、出産後の母乳の出を良くすることを期待し食される場合が多い[3]

例えば広島県(尾三地区)では、鯉こくは好意を持っている相手に対して鯉の手料理を作って、好きな気持ちを伝えるという儀式があり、現在でも伝承されている。

出典

  • 市毛弘子、石川松太郎、「近世節用集類に収録された食生活関係語彙についての調査 (第3報)」『家政学雑誌』 1984年 35巻 12号 p.886-898, doi:10.11428/jhej1951.35.886, 日本家政学会

脚注

  1. ^ a b 三井早苗、「榮養の多い臓物料理」『家事と衛生』 1934年 10巻 3号 p.31-37, doi:10.11468/seikatsueisei1925.10.3_31, 大阪生活衛生協会
  2. ^ 片桐学、「信州の食文化(2)」『信州短期大学紀要』 2009年 21巻 p.40-46, ISSN 1880-4799, 信州短期大学
  3. ^ “鯉こく 福島県 | うちの郷土料理:農林水産省”. 農林水産省. 2023年6月14日閲覧。

関連項目

外部リンク

  • 吉岡由美、小木曽加奈、中澤弥子、「長野県上田市近郊の給食施設従事者における淡水魚の食習慣」 『長野県短期大学紀要』 2007年 62巻 p.45-52, NAID 110006966367, 長野県短期大学
  • コイのあらい、コイこくを調理する上村政秀さん - YouTube(朝日新聞社提供、2019年2月27日公開)
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