伊藤和典

伊藤 和典いとう かずのり1954年〈昭和29年〉12月24日 - )は、日本脚本家山形県上山市出身、早稲田大学第一文学部中退。

人物

山形県上山市映画館「トキワ館」を経営する実家で育ち、中学生のころは円谷英二のような特撮監督になりたいと思っていた[1]早稲田大学ではテレビ芸術研究会に所属。大学生のころに現場を体験しようと「ライオン奥様劇場」と「土曜ワイド劇場」のADを体験し、演出は朝が早いので向かないと達観し脚本家を意識し始める[1]テレビドラマの助監督やシナリオライターのアルバイトを始め、やがて大学は3年で中退した[1]がライターの仕事では食べられずに、アニメ業界へ足を踏み入れる[2]

24歳のころ1年ほど続けた缶コーヒーの自動販売機のセールスの仕事を休んだ日にスポーツ新聞に日本サンライズの制作進行募集の求人広告を見付け応募[1]。テレビアニメ『サイボーグ009』で制作進行を務めた後、スタジオぴえろへ制作として入社。スタジオぴえろの第1回作品の『ニルスのふしぎな旅』でも制作進行を務め、ここで伊藤はその後のパートナーとなる押井守と知り合う。押井守がチーフディレクターに昇格した『うる星やつら』からは文芸を担当することになった[2]

『うる星やつら』は伊藤が本格的に脚本家としての活動を始めるきっかけとなった作品であり、キャラクターデザイン高田明美とは後に結婚するなど転機となった作品である(後に離婚)。押井、高田らとは後に『機動警察パトレイバー』の原作チームヘッドギアを結成した。

伊藤は「平成ガメラシリーズ」の生みの親でもある。実家の映画館で怪獣映画を見ながら育った根っからの怪獣映画ファン。担当したアニメ作品ではよく怪獣映画のオマージュを取り入れた[3][注釈 1]。また、『ガメラ』を監督した映画監督である金子修介とは、かつての特撮テレビ『ウルトラQ』の劇場映画版を作る予定があったが、流れてしまった経緯がある。

神奈川県横浜市在住。

作風

方向性としては、「主人公より、周囲の脇役を克明に描写することで、逆説的に主人公のポジションを確立させる」[4]「事前に設定を固めて作品全体をコントロールするのではなく、サブライターが考えた設定を適宜・付け足しながら肉付けして、作り上げたキャラクターを走らせることで展開する」[5]手法を中心にしている。

大の『マジック:ザ・ギャザリング』好きであり、「平成ガメラシリーズ」にはその影響が随所に見られる。また、担当した特撮ドラマにシリコンの要素を含ませることが多い。

押井守は「企画を立案するアイディアマンであり、キャラクター同士の対話を書くセンスはうまかった」と評している[6]

真下耕一は「主役を張れる様なわかりやすい情熱・正義感を持っているキャラクターではなく、卑怯だったり、悪意を持っていたり等、一番駄目な奴を敢えて主人公にすることで、現代の若い世代を象徴的に描いているのがすごい」と賞賛している[4]

鳥海永行は「ダイアローグは大丈夫だ。縦筋の構成はでたらめだ」と批判している[6]

受賞

機動警察パトレイバー2 the Movie
GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊
ガメラ 大怪獣空中決戦

主な作品

その他

  • 実家の映画館(トキワ館)は1990年代に閉館し、2021年に解体された。往時の姿は、押井守の映画『紅い眼鏡』や『トーキング・ヘッド』でうかがい知ることができる。
  • 公私ともに付き合いの深い押井守が「犬」をパーソナルシンボルとするのに対し、伊藤は「猫」である。親友のゆうきまさみが伊藤をモデルとして『究極超人あ〜る』に登場させた「文芸部の伊東君」は完全に「猫男」になっていた。

メディア出演

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 魔法の天使クリィミーマミ』第39話「ジュラ紀怪獣オジラ!」、『機動警察パトレイバー』(OVA版)第3話「4億5千万年の罠」など[3]

出典

  1. ^ a b c d “がたふぇすVol.11機動警察パトレイバー30周年突破記念「OVA-劇パト1展」開催記念トークショー」 - YouTube”. 令和2年12月3日閲覧。
  2. ^ a b 徳間書店刊『アニメージュ』1983年2月号「プロフェッショナル探訪 Vol.32 伊藤和典」p.81より。
  3. ^ a b 「ゴジラ映画を100倍楽しくする 東宝怪獣映画カルト・コラム 46 ゴジラとアニメーション」『ENCYCLOPEDIA OF GODZILLA ゴジラ大百科 [メカゴジラ編]』監修 田中友幸、責任編集 川北紘一Gakken〈Gakken MOOK〉、1993年12月10日、170頁。 
  4. ^ a b 徳間書店刊「アニメージュ」2002年3月号「What is .hack?」p.60より。
  5. ^ ぴあ刊「機動警察パトレイバー 泉野明ぴあ」pp.28-29より。
  6. ^ a b 徳間書店刊「勝つために戦え! 〈監督ゼッキョー篇〉」押井守著p.351より。
  7. ^ “ゆうきまさみ、出渕裕ら集結!「パトレイバー」の誕生に迫る番組、BS-TBSで明日放送”. コミックナタリー. ナターシャ (2023年3月6日). 2023年3月8日閲覧。

参考文献

  • 『魔女っ子倶楽部』バンダイ〈ビークラブ・スペシャル10〉、1987年10月1日、73頁。ISBN 4-891893-26-5。 

関連項目

外部リンク

  • 伊藤和典 (@Ito_Kazunori) - X(旧Twitter)
  • 伊藤和典公式ページ - ウェイバックマシン(2000年9月19日アーカイブ分)
  • 伊藤和典公式ページ保存版
劇場版
ゲーム

機動警察パトレイバー 〜ゲームエディション〜 - スーパーファミコン版- PATLABOR 98式起動せよ!

作中項目
関係人物
関連項目
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ガメラ
作品
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平成三部作
新生版
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関連人物
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脚本
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