ドーハラウンド

ドーハラウンド(ドーハラウンド、Doha Round)は、貿易障壁をとり除くことを目的として世界貿易機関(WTO)が主催する多角的貿易交渉である。一般に、ドーハ・ラウンド(Doha Round)の名称が使用されることが多く、日本の外務省もHPで「ドーハ・ラウンド交渉」[1]とし、WTO自体もHPにおいて[2]、Doha Roundの名称を使用しているが、正式(semi-officially[2])な名称はドーハ開発アジェンダ(Doha Development Agenda)である。これは、「ラウンド」の名称を使用することに開発途上国が反発したためである。

概要

ドーハラウンドは2001年のカタールドーハにおけるWTOの第4回閣僚会議において開始が宣言[3]された。2003年のメキシコカンクンにおけるWTOの第5回閣僚会議においては、閣僚宣言案が採択されず[3]、中断と再開を繰り返した末、ジュネーブで行われた第8回WTO閣僚会議(2011年12月17日)で「交渉を継続していくことを確認するものの、近い将来の妥結を断念する」(議長総括)となり事実上停止状態となり、部分合意等の可能な成果を積み上げる「新たなアプローチ」の採用が合意[3]された。

その後、2013年のバリ島における第9回閣僚会議で、貿易円滑化協定を含む、貿易円滑化・農業・開発の3分野の部分合意及びDDAの今後の作業計画策定を内容とする「バリ合意」が成立[3]し、2014年7月まで貿易円滑化協定をWTO協定に加える(附属書1Aに追加)するための文書を一般理事会で採択すべきとされた[4]。しかしインドが合意を蒸し返す状態で反対したため期限までに採択できなかった[5]。その後食糧備蓄への補助金の問題で先進国側が譲歩することでようやくインドが合意し、2014年11月27日の一般理事会で貿易円滑化協定が採択された[5]。WTO加盟国の3分の2が改正を受諾した日に発効することになっており、2017年2月22日にこの要件を満たし、協定が発効した。

交渉の状況

ウルグアイ・ラウンドでも難航した、農作物分野での交渉は、自由貿易を推進するケアンズグループやアメリカの輸出国グループと、助成金を多用するEUや純食料輸入国からなる日本やスイスなど国内保護重視のグループ(G10)、そして特別な保護を要求する発展途上国(G4ブロックによって代表されるG20発展途上国諸国やG33)の鼎立状態により議論が膠着した。さらに新興国(中国、インド、ブラジル等)と米国の対立[3]は様々な分野でおきた。そのため、バリ合意による貿易円滑化協定の発効以外主だった動きはない。

WTOを主体とした自由貿易体制の構築を目指していた日本は、経済戦略の見直しを求められており、WTO体制を補完するEPA/FTA交渉(TPP等)への積極的取組、有志国(プルリ)交渉(情報技術協定(ITA拡大)、新サービス貿易協定(TiSA)、環境物品自由化交渉など)も推進[3]としている。

GATT/WTOの多角的貿易交渉

多角的貿易交渉の推移

出典

[脚注の使い方]
  1. ^ “ドーハ・ラウンド交渉”. 外務省. (2016年6月8日). https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_000310.html 2019年2月28日閲覧。 
  2. ^ a b “The Doha Round”. World Trade Organization. https://www.wto.org/english/tratop_e/dda_e/dda_e.html 2019年3月1日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f “WTOとドーハ・ラウンド(DDA)交渉”. 外務省. https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000015001.pdf 2021年3月19日閲覧。 
  4. ^ “9TH WTO MINISTERIAL CONFERENCE, BALI, 2013”. World Trade Organization. http://wto.org/english/thewto_e/minist_e/mc9_e/balipackage_e.htm 2014年12月12日閲覧。 
  5. ^ a b “WTO: 2014 NEWS ITEMS”. World Trade Organization. http://www.wto.org/english/news_e/news14_e/tnc_infstat_31jul14_e.htm 2014年12月12日閲覧。 

関連項目

条約

世界貿易機関を設立するマラケシュ協定
附属書 1A:物品の貿易に関する多角的協定 - (A)1994年のGATT - (B)農業協定 - (C)SPS協定 - (D)繊維協定 - (E)TBT協定 - (F)TRIMs協定 - (G)アンチ・ダンピング協定 - (H)関税評価協定 - (I)PSI協定 - (J)原産地協定 - (K)ライセンシング協定 - (L)補助金協定 - (M)漁業補助金に関する協定- (N) セーフガードに関する協定- (O)貿易の円滑化に関する協定
附属書 1B:サービスの貿易に関する一般協定(GATS)
附属書 1C:知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)
附属書 2:紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(DSU)
附属書 3:貿易政策審査制度(TPRM)
附属書 4:(A)民間航空機貿易に関する協定 - (B)政府調達協定
過去に附属書4の協定だったが、失効し、附属書4から削除されたもの:(C)国際酪農品協定 - (D)国際牛肉協定

ラウンド
事務局長
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